■似て異なる書アートの分野

書道展にデジタル書道作品があれば、目立ちます。

逆に、デジタル書道展に書道作品があれば、やはり目立ちます。

それは、水墨画展にカラフルな水彩画作品があるようなもので、しごく当然のことです。


書道とデジタル書道作品を、同列に評価することはできません。

なぜなら、書道とデジタル書道は異なる分野の書アートだからです。

双方共に書文字による自己表現を行う分野ですが、重視する点がまったく異なっているのです。

(ちなみに、良く言われるところの「彩り豊かな書」というのは明確な相違点ではありません。なぜなら、最近では色を使った書道作品も珍しくなくなってきたからです。同様に、「彩り豊かでない」デジタル書道作品もあります。例外事項がある以上は、明確な相違点とは言えません)


書道では、「瞬間の意図」を重視します。

揮毫前の勉強・練習・準備などはあるにしても、結果的には揮毫のわずかな時間に引かれた線が作品の大部分を決定します。

塗り重ねや表装、展示などの見せ方に違いはあっても、一度書かれた文字は、その構成や意図を大きく変えることがありません。


デジタル書道では、「意図の再構成」を重視します。

揮毫時に考えていた構成や意図は、制作過程において大きく変わります。

パソコン上で柔軟に形状・構成・色彩を変え、他の画像素材と合成して作品を作っていきます。

場合によっては、揮毫時の作品とは似ても似つかないものを作品として完成させることもあります。


それぞれにそれぞれの魅力があり、優劣を競わせるのはナンセンスです。

同じ「球技」という分野だからといって、サッカーのルールで野球をすることはできませんし、評価をすることもできないでしょう。


書アートとは、文字を用いたアート全般を指す言葉です。

書道やデジタル書道は、この中に含まれます。

しかし、制作過程や重視する点が違うため、この二つは別分野の書アートということができます。


*小冊子「デジタル書の世界」より引用(一部改変)